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Trois participants pacifiques à la marche-manifestation arrêtés à Shibuya, Tokyo Le 26 octobre 2008, dans le quartier de Shibuya, à Tokyo, trois participants à la marche-manifestation, intitulée "Reality Tour 2 Allons voir la maison du Premier Ministre Taro Aso qui coûte 6,2 milliards de yen", organisée dans le cadre de la Fête contre la guerre et pour la résistance, ont été arrêtés et ils sont toujours en détention à la police à ce jour (le 2 novembre 2008). Le but de ce "Reality Tour" était de voir la maison luxueuse de monsieur Taro Aso dont seul le terrain coûterait 6,2 milliards de yen. En effet, les manifestants, dont la plupart était de jeunes travailleurs précaires, ont voulu voir quelle vie mène monsieur Aso, qui devrait apporter une solution politique à la difficulté, la précarité et la pauvreté des jeunes Japonais. Mais malheureusement, cette tournée a été dispersée par la police. Voici ce qui s est passé le 26 octobre. A 3 heures de l après-midi, le chef en charge du maintien de l ordre de la Préfécture de police de Shibuya est venu informer aux participants à cette marche, réunis à la place Hachiko (devant la gare Shibuya), qu ils auraient le droit de marcher sur la zone piétonne des rues et qu ils pourraient aller voir la maison de monsieur Aso par cinq ou six, etc. Après cette discussion, les cinquantaines de participants, après avoir retiré leurs pancartes à la demande de la police, ont commencé à marcher vers la maison Aso, sans même utiliser de micro, d amplificateur ou de haut-parleur. Cinq minutes après, dans la foule de ce quartier, les policiers qui accompagnaient cette marche ont soudain saisi violemment les 3 participants en tête de cette marche qui avaient une pancarte sur laquelle était marqué le titre de ce Reality Tour, en criant "Arrêtez-les ! Insultes aux forces de l ordre !" Ainsi, ces trois personnes ont été arrêtées et emmenées à la police. Les masse média rapportent que la police auraient donné des avertissements à plusieurs reprises aux participants à cette marche avant cette arrestation. Mais ce n était pas le cas, sauf avant le départ. De même, les masse média rapportent que les participants à cette marche auraient été violents envers les policiers qui étaient présents mais ce n est absolument pas vrai. De plus, les masse média rapportent aussi que la raison de cette arrestation était une violation des règlements de l ordre public et les insultes aux forces de l ordre mais ce n est absolument pas vrai. Ce n est pas tout La préfécture de police de Shibuya, où ont été détenues ces trois personnes arrêtées, a refusé l audience entre eux, les autres participants à la marche et l avocat. De plus, la police a prolongé la détention de 10 jours et interdit l audience de nouveau avec qui que ce soit. Voici les vidéos qui décrivent tout ce qui est décrit ci-dessus 1. La réunion entre les participants et la police avant le départ (à la place Hachiko, Shibuya) http //jp.youtube.com/watch?v=VukCiIa0BDc 2. Les policiers en discussion juste avant l arrestation http //jp.youtube.com/watch?v=Rc0Z0Yvde8E 3. L arrestation http //jp.youtube.com/watch?v=3Uw701vV15U Si ces jeunes ont été arrêtés, c est parce qu ils ont voulu voir la maison du premier ministre. C est ainsi que l ordre public est maintenu au Japon. La raison de cette arrestation était les insultes aux forces de l ordre. Voilà la réalité au Japon... Allez, venez visiter le Japon. La vie privée du premier ministre est tellement précieuse que la police arrêtent les citoyens qui veulent voir sa maison tranquillement. Si vous venez au Japon, vos empreintes digitales et vos photos seront enregistrées et vous serez surveillés. Bienvenue au Japon. Tant que vous ne voulez pas voir la réalité au Japon, vous serez les bienvenus. (texte rédigé le 2 novembre 2008) Source http //asoudetekoiq.blog8.fc2.com/blog-entry-22.html http //blog.goo.ne.jp/tokyodo-2005/e/2753bef34e857f6276766d7665e11501
https://w.atwiki.jp/gijin-kareshi/pages/366.html
開催期間 GREE、モバゲー、公式、iOS:2013年8月29日~9月12日 entag!、pixivモバイル、BLobby、mixi:2013年8月28日~9月11日 行動力 声掛け 期待値とjp 選択肢と取得チャンス 早期クリアキャンペーン 交換ショップ ブックチャレンジ ランキング 個人目標 コメントフォーム 行動力 上限50 6分で1回復 イベント君の使用で全回復 日跨ぎ・お勉強・お仕事では回復しない ▲▼ 声掛け 同じ生徒には1日1回、声掛けは10回まで 朝5時で全回復 声掛けを行うと10回行動する間の選択肢、取得チャンスで入手できる期待値に+1 声掛けを受けた人は10回行動する間取得チャンスの発生率が上がる イベント君の使用で全回復 ▲▼ 期待値とjp 期待値は選択肢、取得チャンスにて入手できる。 10行動すると読書イベントが発生。 時点の期待値の数によって入手jp(ジャンルポイント)が変動する。 イベント君の使用で任意のジャンル変更ができる。 期待値 jp 0~5 1 6~9 2 10~13 3 14~17 4 18~ 5 ▲▼ 選択肢と取得チャンス 気になっていた本が全て貸出中だった…。 他のを探す→期待値+1、+2、+3、+5のランダム司書に聞く(イベント君を使う)→必ず期待値+5 本の場所がわからないその時あなたは? 司書に聞く→期待値+1一緒に探す→期待値+2、期待値0生徒に任せる→期待値+2、期待値0 声掛け効果中は上記の結果に期待値+1 ▲▼ 早期クリアキャンペーン イベントページにログインしてから48時間以内に本を45冊読了するとイベント効果付きアバターが貰える。 アイテム 大図書館 画像 部位 背景 効果→交換ショップの景品が30%割引きになる 早期クリア再実施 期間 9/4 18時頃~9/6 18時頃 達成条件 終了時刻迄に本を45冊読了する。 ※既に45冊読了済みのユーザーは【本を探す】のリンクをクリックした時点で特典が貰える。 効果は重複しない。 ▲▼ 交換ショップ 集めたjpとアバターの交換ができる =歴史、=ファンタジー、=ミステリー、=SF、=ライトノベル 本屋の店員 黒 13 衣装 本屋の店員 赤 13 衣装 本屋の店員 緑 13 衣装 読書を共に… 白黒 13 衣装 読書を共に… 黒灰 13 衣装 読書を共に… 橙赤 13 衣装 ファンシーボックス 茶 3 3 3 3 2 背中装飾 ファンシーボックス 緑 3 3 3 2 3 背中装飾 ファンシーボックス 赤 3 2 3 3 3 背中装飾 Book Bag ブラウン 2 3 3 3 3 体装飾 Book Bag ホワイト 3 3 2 3 3 体装飾 Book Bag ブラック 3 3 3 2 3 体装飾 執筆机 ホワイト 13 体装飾 執筆机 ブラウン 13 体装飾 執筆机 ブラック 13 体装飾 司書 バープル 13 衣装 司書 ブルー 13 衣装 司書 ブラック 13 衣装 マジックブックイリュージョン type1 13 体装飾 マジックブックイリュージョン type2 13 体装飾 マジックブックイリュージョン type3 13 体装飾 画像クリックで試着画像 隠し部屋 イベント開始から48時間経過すると行動中にランダムで出現するようになる。 「赤い本」「青い本」「黒い本」どれを選んでも各ジャンル2jp、冊数は1冊増える。 ▲▼ ブックチャレンジ 任意で選んだジャンルのjpを4消費で1回チャレンジできる。 3つのスクラッチのうちから1箇所選び、結果によって景品が貰える。 jpが続く限り1日何度でも挑戦可能。 景品一覧 1等 無料ガチャ券 2等 無料ミニガチャ券 3等 Antique Desk(背中装飾) グリーン レッド ブルー Summer Student(衣装) ホワイト ブラック ブルー 眼鏡男子(衣装) 茶 黒 白 4等 ユニオンシャツ(衣装) type1 type2 type3 オータムカーディガン(衣装) 黄 灰 赤 茶 Book Desk(体装飾) ブラウン ブラック ホワイト 5等 営業スマイル5 爽快クールガム5 ▲▼ ランキング 本を借りた数で決定される 順位 1~100位 101~1000位 1001~5000位 5001~10000位 アイテム Reader Book Room Manuscript Paper 画像 部位 衣装 背中装飾 体装飾 順位 1~50位 51~300位 301~500位 501~1000位 画像クリックで試着画像 順位について 上方はGREE、モバゲー、公式 下方はentag!、pixivモバイル、BLobby、mixi ▲▼ 個人目標 レンタル数 300 280 260 200 150 130 110 80 アイテム 本の世界type1 イベント君×1 本の世界type2 応援団×1 Read Styleウォーター 爽快クールガム60×1 Read Styleレッド 営業スマイル×1 画像 部位 体装飾 - 体装飾 - 衣装 - 衣装 - 画像クリックで試着画像 ▲▼ コメントフォーム 情報を募集しています。イベントについて質問される方はインフォや説明をよく読んでからでお願いします。 100回以上やって無料ガチャチケは3回も出たのに、眼鏡男子茶色は未だに出ないですね -- (名無しさん) 2013-09-10 08 05 54 およそ750pt程使って漸くスクラッチアイテムフルコンプ。そのうち約半分は5等。私の場合、3等はSummer衣装の白、眼鏡男子の茶、Antiqueの赤と青が各一つずつしか無いんで出にくい、のかも。ガチャチケはミニ一枚と普通のが二枚。 あと法則ってわけじゃ無いんですが、左から順に三回ずつ回せば最低でも一つはアイテム手に入りましたよ。ptが足りない場合でも左から一回ずつジャンルを変えてやったら一つは貰えました。私だけかな。@公式使用 -- (名無しさん) 2013-09-10 13 09 47 相変らず、3等のSummer Student(衣装)ホワイトだけが頑ななまでに出ない者です。 「左から順に三回ずつ回す」を試してみたところ、3等の眼鏡男子(全色)出まくりました。 同じ3等でも私が欲しいのは…ホワイトー!(´;ω;`)ブワッ -- (名無しさん) 2013-09-10 18 13 34 ガチャチケが異常に出なかった者です! 過去形です!! 2等ですがやっと当たりました!(*1)) 皆さんも当たりますように…(´・ω・`) -- (名無しさん) 2013-09-11 00 37 54 今頃本の元ネタの質問なんですけど、SFで眼鏡が発達していて仮想世界がある作品って電脳コイルのことですか? それと分厚いラノベとは何の作品なんですか? -- (名無しさん) 2013-09-11 00 41 53 眼鏡のは電脳コイルで正解ではないでしょうか。 "分厚いラノベ"は境界線上のホライゾンではないかと。 主人公が全裸になって分厚いラノベ、とありましたのでおそらく合っていると思います。 -- (名無しさん) 2013-09-11 02 03 57 ↑さんへ ラノベの方は知らない作品でした(笑) ありがとうございました!! -- (名無しさん) 2013-09-11 07 40 51 たまったpt一気に消費してみました。およそ800pt使って結果は↓でした。 3等 Antique Desk緑3赤2青2 Summer Student白2黒2青1 眼鏡男子茶4黒8白5 4等 ユニオンシャツtype1→9、type2→8、tpe3→7 オータムカーディガン黄5灰2赤10茶7 Book Desk茶4黒8白9 ミニガチャチケ1 ガチャチケ4 単純計算してこれらで412ptなので、残り半分くらいが5等だったようです。 ちなみに、残り650ptあたりで面倒になってから選択肢は全部左にしました(笑) -- (名無しさん) 2013-09-11 09 30 49 熱血「走ってたら司書がわらわら出てきたけど逃げ切ったからセーフだよな!司書と遊べるし面白いぜ!」そりゃ司書さんも怒って警戒するでしょうよ… -- (名無しさん) 2013-09-11 11 07 12 1000pt使ってガチャ、ミニガチャ共に一枚も出ませんでした(´・ω・`) -- (名無しさん) 2013-09-11 22 04 07 名前 コメント すべてのコメントを見る ▲
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/1241.html
Report.08 長門有希の操作 今日、すること。この流れなら言える。以前試みて、できなかったこと。 ネット上の、彼女に関する個人情報を消去する。 やはり彼女が日常生活を取り戻すためには、この過程は必要となる。情報統合思念体としても、涼宮ハルヒが世間に妙な注目を浴びて、余計なストレスを受けることは好ましくないと大勢は判断している。対処が難しくなるから。 そしてもちろん、わたしという個体も、彼女が日常を取り戻すことを……強く、願っている。 実現のために必要なことは……彼女、涼宮ハルヒの同意。 どのように話を持って行くか。考える。昨日、わたしは彼女と一緒に帰宅するために、彼女に変装……男装をさせた。 そう。彼女は、そのままでは誰かと一緒に歩くことも叶わない。そして何より、彼女の仲間……SOS団に近付くことさえできない。団長であるというのに。このままで良いのか、彼女に問い掛ける。彼女は否定すると予想される。 そこで、日常に戻れる方法として、ネット上の個人情報を消去することを提案しよう。この線だ。 彼女が同意さえすれば、情報の消去はたやすい。むしろ、彼女に対する偽装工作の方が重要となる。どのように彼女に現象を納得させるか。 あくまで、一般的な人間の理解の範囲から余り外れない方法で納得させるのが望ましい。その方法については、一つ心当たりがあった。少し無理があるかもしれないが。 方針は決まった。 以上のことを、わたしは彼女と抱き合いながら、耳元で囁きあいながら、考えていた。まだまだ彼女とこうしていたいという『願望』はあったが、それは好ましくない。 「……そろそろ起きないと。」 「むふー、残念。」 わたし達はゆっくりと体を起こした。ようやく今日という一日が始まった。 洗面台。わたし達は並んで歯を磨く。彼女は歯磨き剤を使わない。いつまでも口の中に味が残って、食事の味が変わるのが嫌なのだという。 「なんで、歯磨きって、ミント系の味しかないんやろな? 揃いも揃って。他の味、というか、あんまり味がせえへんやつ、味が残らへんやつがあってもええと思うんやけどなー。」 【なんで、歯磨きって、ミント系の味しかないのかしら? 揃いも揃って。他の味、というか、あんまり味がしないやつ、味が残らないやつがあっても良いと思うんだけどなー。】 などと言いながら、わたし達は同じタイミングで同じ動作をしていた。うがいのタイミングまで同じ。 朝食は、昨日買ってきたコンビニエンスストアの弁当その2。彼女もわたしも、Tシャツとパンツだけを身に着けている。 「女同士、気にすることないやろ? 一緒にお風呂入った仲やんか。それに……(ごにょごにょ)」 【女同士、気にすることないでしょ? 一緒にお風呂入った仲じゃない。それに……(ごにょごにょ)】 とは、彼女の弁。なお、不明瞭な後半部分は、あえて記すこともないと判断した。 わたしは、いつもの無表情の裏で、話を切り出す時機を窺っていた。 人間が服装に特別な『思い入れ』を持っていることは、知識としては知っている。 衣服を身に纏うことは、毛皮も鱗も持たない有機生命体である人間が、生命活動を維持するために気温等周囲の環境から身を守る行動。 しかし人間は、衣服に別の情報を付与した。 『おしゃれ』 衣服その他を用いて、人間は自らの身体を装飾することを覚えた。最初それは、他の生命体同様、繁殖のために異性を惹き付けるための行動だった。例えば孔雀のオスの華美な羽や、タナゴやオイカワに現れる婚姻色の代替手段として。毛皮等を持たず、明確な発情期がなく、身体に余り変化が現れない人間にとって、衣服で異性を惹き付けることは、制限から生まれた苦肉の策といえる。 またしても、制限による工夫。 当初は異性を惹き付けるための苦肉の策であったおしゃれ。 これは換言すると、『他者とは違う格好をすることに意味を持たせる』行為。 そこに、新たな情報が生まれた。 人間は、性別、地位、職業その他の様々な属性の違いに応じて、服装を変えることで違いを表示するようになった。例えば『制服』。人間は、一定の職業と性別に合わせて、一様の衣服を着ることで職業と性別を表示する。そうすることで、他の職業の人間との区別を行いやすくし、その職務執行を円滑にしている。 そして涼宮ハルヒが朝比奈みくるに行わせている『コスプレ』や、昨日わたしが彼女に提案した『変装』及び『男装』は、こうした属性を表示する制服の機能を利用した行為。 そういえば、『萌え』という感情は、人間の性的衝動と深い関係があることが分かってきたが、萌えを刺激するコスプレや異性装が、元々は着飾ることの原因だったものの、後に切り離されていった性的衝動に再び繋がるのは興味深い。 わたしは、服装についての情報に重きを置いていない。周囲の環境から身を守るという機能は、わたしにとって無意味。たとえ裸であっても、機能上は全く問題はない。 裸で表を出歩かないのは、身体を覆わないことを禁則事項とする認識が人間社会に共通して存在するから。身体を覆う面積は地域、文化、風習等で差異が生じるが、どれだけ覆う面積が小さい、裸に近い姿で生活している文化でも、生殖器だけは何らかの方法で覆うことは共通している。そこにどのような意味、あるいは『意識』が込められているのか、わたしには実感できない。 ここからは推測になるが、それには『生殖能力』が関係しているのではないだろうか。 わたしには、『生殖能力』は存在しない。『性器』は有するが、『生殖器』としては機能しない。必要がないから。 だが、もしかすると、人間をより詳細に観測するためには、なくても良いと判断できるような機能でも、備えているといないとでは、観測結果に微細な又は重大な差異を生じるのかもしれない。 この点について、現時点では情報が不足している。情報の不足を解消するためには、やはり実験してみる必要があるだろう。わたしを使うのか。あるいは別のインターフェイスを使うのか。どのような手法によるものかは分からない。 長々と服装について考察していたのには理由がある。わたしが立案した計画は、服装も大いに関係がある。わたしは待った。 「ごちそーさまっ。」 「食後はコーヒー?」 「えっ! 淹れてくれるん!?」 【えっ! 淹れてくれるの!?】 「待ってて。」 わたしは台所に行き、お湯を沸かしながらドリッパーを準備する。 「あたしはカフェオレでお願い! 豆乳でー!」 コーヒーを淹れ始めると、すぐにコーヒーの香ばしい匂いが立ち込める。フィルターを外して蓋に差し替え、リビングに向かう。カップセットは二つ。砂糖はなし。 「ブラックはよう飲めへんけど、甘いのもあんまり好き違(ちゃ)うねん。」 【ブラックはとても飲めないけど、甘いのもあんまり好きじゃないのよ。】 甘くないカフェオレが一番具合が良いそうだ。わたしはブラックで飲む。 『ふ――――っ。』 思わず息をつく。一人で飲んでも特に何も感じるものはなかったが、今は二人。これもまた食事と同じく、美味しいものだった。 「さて、今日はこれからどないしよ?」 【さて、今日はこれからどうしようか?】 彼女はぽつりと呟いた。 来た。 「朝の続きする?」 彼女はにんまりと笑いながら言った。 「それは推奨できない。他にやるべきことがある。」 わたしは彼女の瞳を真っ直ぐに見据えて言った。 「わたしに考えがある。」 「あなたは現在、表を普通に出歩ける状態ではない。買い物もできない。この原因は一つ。ネット上に晒されたあなたの個人情報。これを消去しない限り、あなたへの来襲は止まない。でも、ひとたびネット上に掲載された情報は、無限に複製し拡散できるため、完全な消去は困難。」 「ほな、どうすんの?」 【じゃあ、どうするの?】 彼女が食いついてきた。行ける。 「一つ手段がある。」 わたしはそこで言葉を区切る。彼女は続きを無言で促す。 「友人のスーパーハッカーに協力を要請する。」 彼女の目が見開かれた。 「スーパーハッカー!? 何それ!?」 これはとあるネット上でのやり取りに登場する一種のジョークに由来するが、彼女は知らないらしい。 「IT関係にとても詳しい人。この人に任せれば間違いない。」 「すごい知り合いがおるんやなぁ……それで、その人にはどうやって連絡すんの?」 【すごい知り合いがいるのね……それで、その人にはどうやって連絡するの?】 「実はもう、手配済み。」 「早っ!!」 「あなたの同意があれば、すぐに着手できる。よく考えて。」 彼女は真剣な表情でわたしを見ている。 「あなたは今、団長でありながら、活動はおろか、団員にさえ近付くことができない。あなたは今のままで良いの?」 「……ええわけ……ええわけないやんかっ!!」 【……良いわけ……良いわけないじゃないっ!!】 彼女は立ち上がった。両手に握り拳を作っている。 「いつまでもしつこくしつこく、散々付き纏いよって! もううんざりや!!」 【いつまでもしつこくしつこく、散々付き纏って! もううんざりよ!!】 彼女は親指で力強く床を指差す。 「ええわ、有希! やっちゃって! その友達のスーパーハッカーさんとやらにすぐに連絡して!!」 【良いわ、有希! やっちゃって! その友達のスーパーハッカーさんとやらにすぐに連絡して!!】 「わかった。」 わたしは彼女の携帯電話を借りると、あるサイトを表示した。いわゆる『まとめサイト』。 「ここにあなたの個人情報が掲載されている。」 「うわ……ほんまや。住所、電話番号に通学経路から家族構成まで!」 【うわ……ほんとだ。住所、電話番号に通学経路から家族構成まで!】 「分かりやすい指標として、このサイトが今から消滅する。」 わたしは席を立ち、固定電話に向かった。彼女からは見えない角度で、0120…から始まる一連の番号を入力する。電話口から声が聞こえてくる。 『こちらは、NTT西日本サービスガイドです。音声でお聞きになる方は01……』 わたしは通話口に語りかける。 「わたし。……そう。同意が得られた。……そう。……わかった。」 電話を切ると、わたしは彼女の元に戻って座った。 「どう!?」 「すぐに着手する。数分もすれば、すべて終わる。」 そしてわたしは情報介入を開始した。今度は弾かれない。しばらく待ってから、時計を見やる。三分経過。もう良いだろう。 「終わった。」 「早っ!?」 「そのページをリロードしてみて。」 「……!? あれ!? ……!? 嘘っ!? 消えてる……」 当該情報の電網空間からの完全消滅を確認。 「情報発信の中心だったそのサイトが消滅した。見える範囲以外の、バックアップデータ等もすべて消去されたと思われる。」 わたしは、コーヒーセットを片付けながら言った。 「彼女の仕事は正確。」 「女の人なんや、そのスーパーハッカーさんて……」 【女の人なんだ、そのスーパーハッカーさんて……】 念のため、『彼女』にも検証を依頼した。すぐに答えが返ってくる。 『全く問題ありませんよ、長門さん。さすがです。相変わらずいい仕事してますね。』 喜緑江美里からの返答が伝わってきた。 『協力に感謝する……ありがとう。』 『どういたしまして。』 あとは人間に残る記憶の方だが、これは単純に情報に触れた人間を片っ端から操作して、一人一人丹念に記憶を消去していくしかない。これは膨大な情報を処理する必要があるため、情報統合思念体が直接行うことになった。わたしが操作するのは、ここまで。10分もあれば、すべて終わるだろう。 これでようやく、彼女は元の生活を取り戻せる。 そんな異常な生活を楽しんでいるのではないか、という意見も一部にはあったが、今のわたしなら断言できる。 それはない。 これで、彼女の行動に対する制限事項は無くなった。 もしかしたら、これまで考察した通り制限に人間の進化を促すきっかけがあるとしたら、彼女が進化するきっかけを失ってしまったのかもしれない。だが、反省も後悔もしていない。他に方法はなかった。少なくとも今は、これで良いと思う。 物事には順序がある。 今の彼女は、制限事項を受け入れる準備ができていない。それはこれから、彼女が様々な経験を通し、『成長』して獲得するもの。これまでの人間の観測結果から、そのような結論が導き出される。 今後彼女は、自身の持つ力を自覚しても何ともないほどに成長するのかもしれない。まだまだ、精密な観測が必要だと思われる。わたしの任務も続くことになる。 でも、それでも良いと思った。むしろそうなってほしいかもしれない。 任務……観測が続けば、それだけ長く彼女を見続けることになる。見続けていられる。 それだけ――彼女のそばにいられる。 ←Report.07|目次|Report.09→
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Report.09 涼宮ハルヒの復活 土曜日はわたしと彼女で、衣服等を買いに行った。もちろん彼女は、行く時は北高の『女子』制服を着て行った。わたしの私服は、彼女には小さい。 「二人で、行った先で買った服に着替えよ!」 【二人で、行った先で買った服に着替えましょ!】 という彼女の発案で、わたしも同じく制服で出掛けた。 マンションから外に出た時、彼女は潜伏者の存在など、最初から気にしていなかった。 「有希が大丈夫って言(ゆ)うたんやから、間違いないやん!」 【有希が大丈夫って言ったんだから、間違いないじゃん!】 彼女は完全に、わたしのことを信用している。素直に『嬉しい』と思った。 西宮北口駅前のショッピングモールに向かう道すがら、彼女は終始楽しそうな表情をしていた。それは、『SOS団団長』涼宮ハルヒが、何か面白いことを考え付いた時のような、何かを企んでいる表情ではなかった。彼女は純粋に、『少女』涼宮ハルヒとしての表情をしているように見えた。 それは、これまでの常に誰かに見張られているという緊張から開放された反動なのか。あるいはそれが、わたしのことを完全に信じて、心から安心しているからなのか。とにかく彼女は、彼女本来の、素直な表情を浮かべているのだと思えた。 もしその表情の原因が、『長門有希がそばにいること』であったなら、わたしはとても嬉しい、と思う。 駅前のショッピングモールで、まずは服を探す。 「せっかくやし、お礼も兼ねてあんたに似合う服探したるわ!」 【せっかくだし、お礼も兼ねてあんたに似合う服探したげる!】 わたしには、人間の『ファッション』なるものはよく分からないが、何をやらせても器用にこなす彼女のこと。わたしに似合う『おしゃれ』な服なのだろう。 ……今度、ファッション雑誌でも読んでみた方が良いのだろうか。 そんなこんなで、服を買って着替え、様々なものを見て周った。 「有希の部屋に合いそうな小物とか、色々あるな~」 【有希の部屋に合いそうな小物とか、色々あるわね~】 わたしの部屋を彼女色に染める計画が始まった、かもしれない。 散々見て周り、時々買い周ったあと、一階のオムライスの店で少し遅めの昼食を取る。 「ん――――……今日は久々に思いっきり動き回ったわ~」 【ん――――……今日は久々に思いっきり動き回ったわね~】 彼女はデザートのパフェを頬張りながら、心底満足した時の表情で言った。買い物中の彼女の表情は、それはそれは明るいものだった。 「……楽しかった?」 「うん! めっちゃ楽しかった!!」 【うん! すっごく楽しかった!!】 「そう。」 子供のように無邪気な満面の笑顔で答える彼女を見ていると、わたしも釣られて笑ってしまいそうだと思ってしまう。そのような『感情』は、本来持っていないはずなのに。 「!?」 突然、彼女の顔が驚愕の表情に変わった。そして次の瞬間には、照れたときの真っ赤な顔に変わった。 「……なに。」 「……私服のあんたの……笑顔に……ヤられた……」 わたしは釣られて笑っていたようだ。微笑。 「ハルヒが嬉しいと、わたしも嬉しいから。釣られて笑ってしもた。」 【ハルヒが嬉しいと、わたしも嬉しいから。釣られて笑っちゃった。】 「はぅ!? ……有希の生の声……私服で……反則……」 彼女の反応がおかしくて、わたしはついに、くすくすと笑ってしまった。また新たな笑い方を覚えた。彼女は口をぽかんと開けて、うっとりとわたしの方を見ている……見とれている。 今のわたしの状態。これが、いわゆる『ギャップ萌え』というものだろうか。萌え……こうまで人間の精神に大きな影響を与えるものなのか。興味深い。 「どうしたの。」 と、わたしはいつもの平坦な声で問い掛けた。 「……!? はっ!? ……はぁ、はぁ、はぁ……思わずお花畑で三途の川を渡る準備しとったわ……」 【……!? はっ!? ……はぁ、はぁ、はぁ……思わずお花畑で三途の川を渡る準備してたわ……】 「おかえり。」 「昨日今日と、あんたには驚かされっぱなしやわ……調子狂うなぁ……」 【昨日今日と、あんたには驚かされっぱなしだわ……調子狂うなぁ……】 「たまには、ええやん。」 【たまには、良いじゃない。】 と、わたしは片目を閉じながら言った。 彼女がスプーンを取り落とした音が響いた。彼女はスプーンを持っていた時の姿勢のまま目を見開き、口を開けたまま硬直していた。ユニーク。 食後は、かさばる物、重そうな物を買って、帰途についた。と言っても、荷物はそんなに多くはない。女子高生二人が普通に持てる程度の量。 「結構買(こ)うたな~」 【結構買ったわね~】 「……わりと。」 今のわたし達は、周囲からはどのように見えるのだろうか。仲の良い女子高生二人組だろうか? 実際は、仲が良すぎる関係になってしまったが。 マンションの部屋で荷物を降ろし、二人の物を分ける。 「ほな、今日は帰るわ。」 【じゃあ、今日は帰るわ。】 自分の荷物を持って、彼女が戸口で言った。 「今日のデート楽しかったで。」 【今日のデート楽しかったわ。】 デート……やはり今日の買い物はそう定義されるのだろうか。 彼女は、わたしを抱き締めると、そっと唇に口付けをした。別れを惜しむような、でもすぐにまた会えるという確信の篭った、暖かい接吻。 わたしの中に、あるものが湧き上がる。昨日まで『エラー』と呼んでいたもの。 『寂しい』『嬉しい』『切ない』『気持ち良い』『愛しい』『幸せ』 たくさんの『感情』が一度に湧き上がった。 これが……『愛情』なのだろうか。分からない。分からないが、決して嫌いじゃない。この『感情』は、嫌いじゃない…… 「ほな、また月曜日、部室で!」 【じゃっ、また月曜日、部室で!】 「……ばいばい。」 元気に手を振りながら帰る彼女を、部屋の外の廊下で見送った。 「……また、部室で。」 それが、彼女が取り戻したかった生活なのだろう。彼女の仲間と過ごす、彼女の、『SOS団団長』涼宮ハルヒとしての生活。 月曜日になれば、色々するべきことがある。忙しくなる。だから日曜日は、ゆっくりしよう。買ったものを飾りながら、彼女のことを考えよう……彼女とのこれからの関係も。 そして月曜日。いつものように登校する。昼休みには部室へ。すぐに読書を開始する。これがわたしの日常。 一日三食取るという決まりはない。三食取る日もあれば、取らない日もある。必要なエネルギーは、朝食、昼食又は夕食でまとめて摂取してしまっても構わない。単に、周囲から怪しまれないように人前では三食取っているに過ぎない。過ぎなかったが。ふと、彼女と一緒に昼食を取るとどうだろうかという考えが浮かんだ。 例えば、わたしが弁当を用意し、部室等で一緒に食べるのも新鮮で良いかもしれない。彼女の好きな食べ物は何だろうか。嫌いな食べ物はなさそう。卵焼きに砂糖は入れる派だろうか。ちなみにわたしは入れない派。それから弁当に半熟卵は危険。痛みやすい。巨大な重箱に日の丸弁当……は、味気ない。却下。せめて『海苔段々』くらいはしないと。 そのようなことを考えていると、部室の扉が開く音がした。彼女が入ってきた。 「お、やっぱり有希はここにおったんやね。」 【お、やっぱり有希はここにいたのね。】 そう言いながら彼女は部室に入ってきた。そして扉を閉めるとすぐに鍵を掛けた。 「これでこの部室は密室。もう逃げられへんでぇ~」 【これでこの部室は密室。もう逃げられないわよ~】 両手を広げ、わきわきさせながら、怪しい笑顔で彼女は言った。 「学校で……けだもの。」 「いやいやいや、さすがに学校ではせえへんって!」 【いやいやいや、さすがに学校ではしないって!】 彼女は笑いながら言った。 「ちょこーっと、二人でいちゃいちゃするだけ♪ 読書の邪魔にはならへんように……まあ善処するし。」 【ちょこーっと、二人でいちゃいちゃするだけ♪ 読書の邪魔にはならないように……まあ善処するし。】 彼女は一度わたしを立たせると、わたしが座っていた椅子に腰掛けた。 「ほんで、有希はあたしの上に座って。」 【それで、有希はあたしの上に座って。】 わたしが彼女の太ももの上にちょこんと腰掛けると、彼女に後ろから抱かれる格好となった。 「時間まで、有希を抱っこさせてな?」 【時間まで、有希を抱っこさせてよね?】 「……当たっている。」 「当てとぉねん♪」 【当ててんのよ♪】 彼女の腕は、わたしの胸に回されている。時折撫で回されもする。しかしそこには、性的衝動の類は感じ取れない。彼女の脈拍も呼吸も落ち着いている。 体重を彼女に預けてみる。彼女の膨らみがより強く感じ取れる。彼女に強く抱き締められた。暖かく柔らかく、それでいて力強い何かに包まれる感覚。このように密着すると、なぜかとても『安心』する。 これが、人間が肉体接触を求める理由の一つなのかもしれない。もしかしたら、日頃彼女が朝比奈みくるにいたずらをするのは、このような肉体接触への欲求が現れたものなのかもしれない。 つまり、彼女はいつも『不安』。そして『寂しい』。そしてわたしは、そんな彼女の……支え、になりたいと思っている。 おかしい。本来あり得ない、というより、あってはならない考え。 彼女は、観測対象。そしてわたしは観測者。観測者が観測対象に干渉してしまっては、観測結果がおかしくなってしまう。やはりわたしは処分されることになるのだろうか。今は、『彼』の『威嚇』が効いているだけで。あるいは、このようなわたしの行動も含めて、壮大な観測なのだろうか。わたしは観測しているつもりで、実は同じく観測されているのだろうか。 そんな懸念も何もかも、彼女の感触ですべて消えてしまう。無知で無力で脆弱な有機生命体である人間が、とても頼もしく感じる瞬間。それは、肉体を持つ有機生命体にしか感じることのできない感覚なのかもしれない。作り物とはいえ、同じく肉体を持つわたしにも感じることができる。これも人間の、奇妙な魅力。 どちらが甘えているのか分からない奇妙な昼休みも、予鈴と共に終わりを告げる。 「もうちょっとこうしてたいけど、しゃあないな。」 【もうちょっとこうしてたいけど、仕方ないわね。】 そう言うと彼女は、名残惜しそうにわたしを解放した。背中を支配していた感触が消失する。背中が寂しい。わたしも残念。 「ほな、放課後に。いよいよSOS団も今日からは団長も復活や! これまでの遅れを取り戻すで!!」 【じゃあ、放課後に。いよいよSOS団も今日からは団長も復活よ! これまでの遅れを取り戻すわ!!】 彼女は握り拳を固めて宣言した。 団長復活。 いよいよ、本格的に日常が再開する。彼女達と彼達の、わたし達の。 『SOS団』一同の日常が。 放課後。ついにこの時がやってきた。わたしが部室に入ると、既に彼女は所定の位置についていた。 「団員一番乗りは有希かあ。」 『団長』と書かれた三角錐が置かれた、彼女の席。彼女は来るものすべてを真っ向から受け止めようとするかのように、腕組みをしながら真っ直ぐ前を見据えて座っていた。 わたしはいつもの窓辺の席に座って、本を読み始めた。これがわたしの日常。 「こんにちは……!? あ、ああっ!?」 「よっ! みくるちゃん、久しぶり!」 「す、涼宮さん!?」 「いよいよ今日から団長復活や!」 【いよいよ今日から団長復活よ!】 「は、はいっ! あ、すぐに着替えてお茶淹れますね!!」 朝比奈みくるは、手際よく着替えを終え、いそいそとお茶をハルヒに渡す。 「ぷっは~!! いやー、みくるちゃんのお茶飲むんも久しぶりやわ~」 【ぷっは~!! いやー、みくるちゃんのお茶を飲むのも久しぶりだわ~】 ノックの音。朝比奈みくるが返答する。 「おや、これはこれは。いよいよ団長も復活でっか。」 【おや、これはこれは。いよいよ団長も復活ですか。】 「古泉くん、お待たせ! あたしがおらへん間、副団長としてよう働いてくれたわ!」 【古泉くん、お待たせ! あたしがいない間、副団長としてよく働いてくれたわ!】 「いえいえ、それほどでも。何にしても結構なことですわ。」 【いえいえ、それほどでも。何にしても結構なことです。】 古泉一樹は、いつもの爽やかな笑顔で答える。そして更にノックの音。再び朝比奈みくるが返答する。 「うーっす……!?」 「どないしたん、キョン? そんな、鳩が豆で狙撃されたような顔して。」 【どうしたのよ、キョン? そんな、鳩が豆で狙撃されたような顔して。】 「いや……」 と、『彼』はわたしに視線を泳がせた。わたしは『彼』にしか分からないほど小さく頷いた。 「そうか……もう、大丈夫なんやな。」 【そうか……もう、大丈夫なんだな。】 そして『彼』は一言、こう告げた。 「おかえり、ハルヒ。」 多くの言葉は必要ない。SOS団は、この一言で、ついに日常を取り戻した。 「いよいよSOS団も完全復活! まずは団長不在中の活動報告から行ってみよか!!」 【いよいよSOS団も完全復活! まずは団長不在中の活動報告から行ってみましょ!!】 ←Report.08|目次|Report.10→
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Report.09 涼宮ハルヒの復活 土曜日はわたしと彼女で、衣服等を買いに行った。もちろん彼女は、行く時は北高の『女子』制服を着て行った。わたしの私服は、彼女には小さい。 「二人で、行った先で買った服に着替えよ!」 【二人で、行った先で買った服に着替えましょ!】 という彼女の発案で、わたしも同じく制服で出掛けた。 マンションから外に出た時、彼女は潜伏者の存在など、最初から気にしていなかった。 「有希が大丈夫って言(ゆ)うたんやから、間違いないやん!」 【有希が大丈夫って言ったんだから、間違いないじゃん!】 彼女は完全に、わたしのことを信用している。素直に『嬉しい』と思った。 西宮北口駅前のショッピングモールに向かう道すがら、彼女は終始楽しそうな表情をしていた。それは、『SOS団団長』涼宮ハルヒが、何か面白いことを考え付いた時のような、何かを企んでいる表情ではなかった。彼女は純粋に、『少女』涼宮ハルヒとしての表情をしているように見えた。 それは、これまでの常に誰かに見張られているという緊張から開放された反動なのか。あるいはそれが、わたしのことを完全に信じて、心から安心しているからなのか。とにかく彼女は、彼女本来の、素直な表情を浮かべているのだと思えた。 もしその表情の原因が、『長門有希がそばにいること』であったなら、わたしはとても嬉しい、と思う。 駅前のショッピングモールで、まずは服を探す。 「せっかくやし、お礼も兼ねてあんたに似合う服探したるわ!」 【せっかくだし、お礼も兼ねてあんたに似合う服探したげる!】 わたしには、人間の『ファッション』なるものはよく分からないが、何をやらせても器用にこなす彼女のこと。わたしに似合う『おしゃれ』な服なのだろう。 ……今度、ファッション雑誌でも読んでみた方が良いのだろうか。 そんなこんなで、服を買って着替え、様々なものを見て周った。 「有希の部屋に合いそうな小物とか、色々あるな~」 【有希の部屋に合いそうな小物とか、色々あるわね~】 わたしの部屋を彼女色に染める計画が始まった、かもしれない。 散々見て周り、時々買い周ったあと、一階のオムライスの店で少し遅めの昼食を取る。 「ん――――……今日は久々に思いっきり動き回ったわ~」 【ん――――……今日は久々に思いっきり動き回ったわね~】 彼女はデザートのパフェを頬張りながら、心底満足した時の表情で言った。買い物中の彼女の表情は、それはそれは明るいものだった。 「……楽しかった?」 「うん! めっちゃ楽しかった!!」 【うん! すっごく楽しかった!!】 「そう。」 子供のように無邪気な満面の笑顔で答える彼女を見ていると、わたしも釣られて笑ってしまいそうだと思ってしまう。そのような『感情』は、本来持っていないはずなのに。 「!?」 突然、彼女の顔が驚愕の表情に変わった。そして次の瞬間には、照れたときの真っ赤な顔に変わった。 「……なに。」 「……私服のあんたの……笑顔に……ヤられた……」 わたしは釣られて笑っていたようだ。微笑。 「ハルヒが嬉しいと、わたしも嬉しいから。釣られて笑ってしもた。」 【ハルヒが嬉しいと、わたしも嬉しいから。釣られて笑っちゃった。】 「はぅ!? ……有希の生の声……私服で……反則……」 彼女の反応がおかしくて、わたしはついに、くすくすと笑ってしまった。また新たな笑い方を覚えた。彼女は口をぽかんと開けて、うっとりとわたしの方を見ている……見とれている。 今のわたしの状態。これが、いわゆる『ギャップ萌え』というものだろうか。萌え……こうまで人間の精神に大きな影響を与えるものなのか。興味深い。 「どうしたの。」 と、わたしはいつもの平坦な声で問い掛けた。 「……!? はっ!? ……はぁ、はぁ、はぁ……思わずお花畑で三途の川を渡る準備しとったわ……」 【……!? はっ!? ……はぁ、はぁ、はぁ……思わずお花畑で三途の川を渡る準備してたわ……】 「おかえり。」 「昨日今日と、あんたには驚かされっぱなしやわ……調子狂うなぁ……」 【昨日今日と、あんたには驚かされっぱなしだわ……調子狂うなぁ……】 「たまには、ええやん。」 【たまには、良いじゃない。】 と、わたしは片目を閉じながら言った。 彼女がスプーンを取り落とした音が響いた。彼女はスプーンを持っていた時の姿勢のまま目を見開き、口を開けたまま硬直していた。ユニーク。 食後は、かさばる物、重そうな物を買って、帰途についた。と言っても、荷物はそんなに多くはない。女子高生二人が普通に持てる程度の量。 「結構買(こ)うたな~」 【結構買ったわね~】 「……わりと。」 今のわたし達は、周囲からはどのように見えるのだろうか。仲の良い女子高生二人組だろうか? 実際は、仲が良すぎる関係になってしまったが。 マンションの部屋で荷物を降ろし、二人の物を分ける。 「ほな、今日は帰るわ。」 【じゃあ、今日は帰るわ。】 自分の荷物を持って、彼女が戸口で言った。 「今日のデート楽しかったで。」 【今日のデート楽しかったわ。】 デート……やはり今日の買い物はそう定義されるのだろうか。 彼女は、わたしを抱き締めると、そっと唇に口付けをした。別れを惜しむような、でもすぐにまた会えるという確信の篭った、暖かい接吻。 わたしの中に、あるものが湧き上がる。昨日まで『エラー』と呼んでいたもの。 『寂しい』『嬉しい』『切ない』『気持ち良い』『愛しい』『幸せ』 たくさんの『感情』が一度に湧き上がった。 これが……『愛情』なのだろうか。分からない。分からないが、決して嫌いじゃない。この『感情』は、嫌いじゃない…… 「ほな、また月曜日、部室で!」 【じゃっ、また月曜日、部室で!】 「……ばいばい。」 元気に手を振りながら帰る彼女を、部屋の外の廊下で見送った。 「……また、部室で。」 それが、彼女が取り戻したかった生活なのだろう。彼女の仲間と過ごす、彼女の、『SOS団団長』涼宮ハルヒとしての生活。 月曜日になれば、色々するべきことがある。忙しくなる。だから日曜日は、ゆっくりしよう。買ったものを飾りながら、彼女のことを考えよう……彼女とのこれからの関係も。 そして月曜日。いつものように登校する。昼休みには部室へ。すぐに読書を開始する。これがわたしの日常。 一日三食取るという決まりはない。三食取る日もあれば、取らない日もある。必要なエネルギーは、朝食、昼食又は夕食でまとめて摂取してしまっても構わない。単に、周囲から怪しまれないように人前では三食取っているに過ぎない。過ぎなかったが。ふと、彼女と一緒に昼食を取るとどうだろうかという考えが浮かんだ。 例えば、わたしが弁当を用意し、部室等で一緒に食べるのも新鮮で良いかもしれない。彼女の好きな食べ物は何だろうか。嫌いな食べ物はなさそう。卵焼きに砂糖は入れる派だろうか。ちなみにわたしは入れない派。それから弁当に半熟卵は危険。痛みやすい。巨大な重箱に日の丸弁当……は、味気ない。却下。せめて『海苔段々』くらいはしないと。 そのようなことを考えていると、部室の扉が開く音がした。彼女が入ってきた。 「お、やっぱり有希はここにおったんやね。」 【お、やっぱり有希はここにいたのね。】 そう言いながら彼女は部室に入ってきた。そして扉を閉めるとすぐに鍵を掛けた。 「これでこの部室は密室。もう逃げられへんでぇ~」 【これでこの部室は密室。もう逃げられないわよ~】 両手を広げ、わきわきさせながら、怪しい笑顔で彼女は言った。 「学校で……けだもの。」 「いやいやいや、さすがに学校ではせえへんって!」 【いやいやいや、さすがに学校ではしないって!】 彼女は笑いながら言った。 「ちょこーっと、二人でいちゃいちゃするだけ♪ 読書の邪魔にはならへんように……まあ善処するし。」 【ちょこーっと、二人でいちゃいちゃするだけ♪ 読書の邪魔にはならないように……まあ善処するし。】 彼女は一度わたしを立たせると、わたしが座っていた椅子に腰掛けた。 「ほんで、有希はあたしの上に座って。」 【それで、有希はあたしの上に座って。】 わたしが彼女の太ももの上にちょこんと腰掛けると、彼女に後ろから抱かれる格好となった。 「時間まで、有希を抱っこさせてな?」 【時間まで、有希を抱っこさせてよね?】 「……当たっている。」 「当てとぉねん♪」 【当ててんのよ♪】 彼女の腕は、わたしの胸に回されている。時折撫で回されもする。しかしそこには、性的衝動の類は感じ取れない。彼女の脈拍も呼吸も落ち着いている。 体重を彼女に預けてみる。彼女の膨らみがより強く感じ取れる。彼女に強く抱き締められた。暖かく柔らかく、それでいて力強い何かに包まれる感覚。このように密着すると、なぜかとても『安心』する。 これが、人間が肉体接触を求める理由の一つなのかもしれない。もしかしたら、日頃彼女が朝比奈みくるにいたずらをするのは、このような肉体接触への欲求が現れたものなのかもしれない。 つまり、彼女はいつも『不安』。そして『寂しい』。そしてわたしは、そんな彼女の……支え、になりたいと思っている。 おかしい。本来あり得ない、というより、あってはならない考え。 彼女は、観測対象。そしてわたしは観測者。観測者が観測対象に干渉してしまっては、観測結果がおかしくなってしまう。やはりわたしは処分されることになるのだろうか。今は、『彼』の『威嚇』が効いているだけで。あるいは、このようなわたしの行動も含めて、壮大な観測なのだろうか。わたしは観測しているつもりで、実は同じく観測されているのだろうか。 そんな懸念も何もかも、彼女の感触ですべて消えてしまう。無知で無力で脆弱な有機生命体である人間が、とても頼もしく感じる瞬間。それは、肉体を持つ有機生命体にしか感じることのできない感覚なのかもしれない。作り物とはいえ、同じく肉体を持つわたしにも感じることができる。これも人間の、奇妙な魅力。 どちらが甘えているのか分からない奇妙な昼休みも、予鈴と共に終わりを告げる。 「もうちょっとこうしてたいけど、しゃあないな。」 【もうちょっとこうしてたいけど、仕方ないわね。】 そう言うと彼女は、名残惜しそうにわたしを解放した。背中を支配していた感触が消失する。背中が寂しい。わたしも残念。 「ほな、放課後に。いよいよSOS団も今日からは団長も復活や! これまでの遅れを取り戻すで!!」 【じゃあ、放課後に。いよいよSOS団も今日からは団長も復活よ! これまでの遅れを取り戻すわ!!】 彼女は握り拳を固めて宣言した。 団長復活。 いよいよ、本格的に日常が再開する。彼女達と彼達の、わたし達の。 『SOS団』一同の日常が。 放課後。ついにこの時がやってきた。わたしが部室に入ると、既に彼女は所定の位置についていた。 「団員一番乗りは有希かあ。」 『団長』と書かれた三角錐が置かれた、彼女の席。彼女は来るものすべてを真っ向から受け止めようとするかのように、腕組みをしながら真っ直ぐ前を見据えて座っていた。 わたしはいつもの窓辺の席に座って、本を読み始めた。これがわたしの日常。 「こんにちは……!? あ、ああっ!?」 「よっ! みくるちゃん、久しぶり!」 「す、涼宮さん!?」 「いよいよ今日から団長復活や!」 【いよいよ今日から団長復活よ!】 「は、はいっ! あ、すぐに着替えてお茶淹れますね!!」 朝比奈みくるは、手際よく着替えを終え、いそいそとお茶をハルヒに渡す。 「ぷっは~!! いやー、みくるちゃんのお茶飲むんも久しぶりやわ~」 【ぷっは~!! いやー、みくるちゃんのお茶を飲むのも久しぶりだわ~】 ノックの音。朝比奈みくるが返答する。 「おや、これはこれは。いよいよ団長も復活でっか。」 【おや、これはこれは。いよいよ団長も復活ですか。】 「古泉くん、お待たせ! あたしがおらへん間、副団長としてよう働いてくれたわ!」 【古泉くん、お待たせ! あたしがいない間、副団長としてよく働いてくれたわ!】 「いえいえ、それほどでも。何にしても結構なことですわ。」 【いえいえ、それほどでも。何にしても結構なことです。】 古泉一樹は、いつもの爽やかな笑顔で答える。そして更にノックの音。再び朝比奈みくるが返答する。 「うーっす……!?」 「どないしたん、キョン? そんな、鳩が豆で狙撃されたような顔して。」 【どうしたのよ、キョン? そんな、鳩が豆で狙撃されたような顔して。】 「いや……」 と、『彼』はわたしに視線を泳がせた。わたしは『彼』にしか分からないほど小さく頷いた。 「そうか……もう、大丈夫なんやな。」 【そうか……もう、大丈夫なんだな。】 そして『彼』は一言、こう告げた。 「おかえり、ハルヒ。」 多くの言葉は必要ない。SOS団は、この一言で、ついに日常を取り戻した。 「いよいよSOS団も完全復活! まずは団長不在中の活動報告から行ってみよか!!」 【いよいよSOS団も完全復活! まずは団長不在中の活動報告から行ってみましょ!!】 ←Report.08|目次|Report.10→
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コメント 月表示にするとグラフがギザギザになる required PHP ../../../config.php $CFG- dirroot. /lib/statslib.php $CFG- dirroot. /lib/graphlib.php PHP function output parameter $courseid = required_param( course , PARAM_INT); $report = required_param( report , PARAM_INT); $time = required_param( time , PARAM_INT); $mode = required_param( mode , PARAM_INT); $userid = optional_param( userid , 0, PARAM_INT); $roleid = optional_param( roleid ,0,PARAM_INT);
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大見出し 全国少年TOUR 05
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FFBE年表http //ffbelogy.html.xdomain.jp/topics/20170305.htmlより 2017.3.4 翌日より開催予定の「回復&サポート」キャラを対象にしたピックアップガチャに、 『アヤカ』や『ロイ』等のキャラが追加されると告知される。 2017.3.5 0 00 「回復&サポート」キャラのピックアップガチャが始まったが提供割合に『アヤカ』の記載無し。 ※一緒に告知されてい他キャラの記載はあった。 2017.3.5 0 30頃 何の告知も無くデータの更新が行われる。 2017.3.5 0 50 「回復&サポート」キャラピックアップガチャのバナーが削除され、それに伴い提供割合も削除される。 お知らせにて「回復&サポート」ピックアップガチャの一時停止を告知するも理由は開示せず ガチャバナーにキャラの表記があるも提供割合に記載がないことから詐欺ではないかということが問題になっている。 通報テンプレ https //www65.atwiki.jp/ffbe_report/?page=%E2%91%A1%E3%83%86%E3%83%B3%E3%83%97%E3%83%AC
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Report.03 涼宮ハルヒの認識(中編) 翌日。わたし達は涼宮ハルヒに学校で出会うことはなかった。 朝の地域版ニュース、新聞の地方面、すべてがある話題で持ち切りだった。 『お手柄女子高生、犯人逮捕』 そんな見出しが、新聞に躍る。その「お手柄女子高生」は、実名で報道されている。 『涼宮ハルヒ(17)さん=西宮市、写真』 紙面は、昨夜たまたま歩いていた涼宮ハルヒに暴行しようとして襲い掛かった変質者を、彼女が返り討ちにして警察に通報、御用となったと、情報に濃淡はあれど一様に伝えていた。 わたしは昨夜の事件発生時点で把握していたが、普段は接続していない情報統合思念体から強制通信で、『彼』の動向に注意を払い、わたしが最善と考える行動を取る様に指示があった。 こんなことは初めてだった。 もちろん情報統合思念体の接続を切っていること自体、初めての経験なので、当たり前といえば当たり前だが、接続を切ってから、わざわざ情報統合思念体から強制通信で指示があったのは初めて。 最初に涼宮ハルヒが宣言した通り、涼宮ハルヒとSOS団の名前は一気に広い地域に知れ渡ることになった。北高前には大勢の取材陣が詰め掛け、大混乱となっていた。 「押さないでください! 道を開けてください!」 急遽配置された教員が声を張り上げ、生徒達を校内に誘導する。生徒が通るたびに大量のフラッシュが浴びせかけられ、記者とマイクが殺到する。 「同じ学校の生徒さんがお手柄ですね! あなたはどう思いますか!?」 ある者は驚き立ちすくみ、ある者は表情を硬くして俯きながら、教員に誘導され校内へ入って行く。 ――校長がコメントを出さないと、混乱が収まらない―― そう判断した学校側は、校門横で校長本人が対応し、取材陣を引き付けて混乱を収拾することにした。 「えー、この度は我が校の生徒の勇敢な行動により……」 この時ばかりは、生徒達は校長の話が長引くことを祈ったかもしれない。 取材陣の殺到、その様子に集まった野次馬達。それら人波による混乱は、涼宮ハルヒ宅前が最も凄まじかった。 「お手柄ですね、涼宮さん! なにか一言を!」 「当然の結果よ! まったく、アホな変質者やで~! この私を襲おうとしたのが運の尽きや!」 【当然の結果よ! まったく、バカな変質者だわ! この私を襲おうとしたのが運の尽きよ!】 『うおおお……』 野次馬からどよめきと拍手が沸き起こり、取材陣と、ついでに野次馬から大量のフラッシュが浴びせられる。涼宮ハルヒは満面の笑みでそれらを一身に浴びていた。 「さて、学校があるから、話は歩きながらでもええかな?」 【さて、学校があるから、話は歩きながらでも良いかな?】 こうして、さながら大名行列か内閣総理大臣の記者質問のように取材陣と野次馬を引き連れて、涼宮ハルヒは登校した。取材陣から投げかけられる様々な質問に、次々と答えていく。涼宮ハルヒはこの状況に酔っていた。普段の満面の笑みが100Wだとすると、さしずめ1kWの笑顔で教室へ向かった。 涼宮ハルヒはまだ気付いてはいなかった。いや、知る由もなかった。人の好奇心が、時に残酷に人を傷付けることを。 涼宮ハルヒが北高の伝説にまた一つ名前を刻んだこの日、彼女は部室に来ることはなかった。 「えらいことになったなぁ……」 【すごいことになったなぁ……】 『彼』はやれやれ、を通り越して何と表現すれば良いのか分からない顔で言った。 「いやぁ、昨日の時点で、犯人の近くに涼宮さんがおることは把握しとったんですが、『機関』の決定は、『涼宮ハルヒに捕り物をさせて満足させる』やったもんで、手ぇ出せんかったんですわ。まぁ、彼女の望み通り、犯人を捕まえて一躍時の人になりましたからな。こちらとしては『バイト』が当分無くなりそうで、万々歳ですわ。」 【いやぁ、昨日の時点で、犯人の近くに涼宮さんがいることは把握していたんですが、『機関』の決定は、『涼宮ハルヒに捕り物をさせて満足させる』だったもので、手が出せなかったのですよ。まぁ、彼女の望み通り、犯人を捕まえて一躍時の人になりましたからね。こちらとしては『バイト』が当分無くなりそうで、万々歳ですよ。】 古泉一樹が肩をすくめる。 「俺としては、今日には例の件を片付けたいと思(おも)とったけど、とてもそんなことできる状態違(ちゃ)うしな……どうしたもんか。」 【俺としては、今日には例の件を片付けたいと思ってたけど、とてもそんなことできる状態じゃないしな……どうしたもんか。】 「事の成り行きを見守る、でええんちゃいますか? 当分涼宮さんの精神状態は閉鎖空間を生み出す状態にはならへんでしょうし、なに、人の心は移ろいやすいもんやさかい、どうせすぐにいつもの日常に戻りますよって。」 【事の成り行きを見守る、で良いのではないですか? 当分涼宮さんの精神状態は閉鎖空間を生み出す状態にはならないでしょうし、なに、人の心は移ろいやすいものですから、どうせすぐにいつもの日常に戻りますよ。】 「そうなればええんやけどな。」 【そうなれば良いんだがな。】 『彼』は窓の外を見ながら、そう呟いた。 涼宮ハルヒへの取材はますます過熱していった。 最初は、『お手柄女子高生』だった。その日の昼には『お手柄美少女女子高生』に変わっていた。こうなると、人々の興味は『美少女女子高生』の私生活に移っていく。 まず、現在の涼宮ハルヒの生活として、『謎の部活「SOS団」の団長』が紹介された。しかし、このSOS団は学校側非公認であるため、学校側からの情報は得られない。生徒からも、『謎の活動』という情報しか得られないため、すぐに人々の興味から外れた。 次に、涼宮ハルヒのSOS団以外の学生生活に取材が進むと、世間の興味を大いにそそる事となった。すなわち、入学初日の涼宮ハルヒの自己紹介等、彼女の奇矯な振る舞いの数々。 『ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい。以上。』 涼宮ハルヒの呼称は『美少女女子高生はオカルトマニア』となった。 そして、涼宮ハルヒの中学時代のエピソード、特に『告白されても断らず、すぐに破局したこと』が紹介されると、世間の評判の方向性が決定付けられることとなった。 『オカルト女子高生はヤ○マンだった!』 『美少女は百合ゲラーがお好き』 週刊誌、スポーツ誌等がこぞって書き立てる。 当初は嬉々として取材に応じていた涼宮ハルヒも、この頃になると、 「うるさい!」 「写真撮んな!」 などと、取材を嫌がるようになっていた。その態度が取材陣をさらに煽る。 『ヤ○マン女子高生は変質者がお好き』 『哀れ変質者、オカルト女に貞操を散らす』 ネットワーク上では、巨大掲示板群に専用スレッドが立ち、涼宮ハルヒの顔写真を使ってグレイ形宇宙人と性交しているコラージュ等が作成され、「SS」と呼ばれる長短様々な小説風の文章が、無数の書き手によって多数掲載された。特に涼宮ハルヒをいじめるSSと、様々な人や人以外のありとあらゆる存在と性交させるSSは、それぞれ一つのジャンルとして、スレッドが乱立するほど人気となった。 この頃になると、日本各地から涼宮ハルヒの元を直接訪問し、宇宙人等の扮装をして告白してからかう行為や、怪談風、猥談風などいたずら電話を掛ける行為がしばしば見られるようになった。 涼宮ハルヒは次第に彼らの相手をしなくなったが、そうなるとますます彼らはいきり立ち、涼宮ハルヒに反応させようと、行動はますます過激になっていく。 たまりかねて涼宮ハルヒが反応すると、その様子が詳細に電子掲示板に書き込まれ、 『さすがハルにゃん!』 『モノが違うぜ……』 こう返すのが、ネットワーク上での定形文となった。 ついに涼宮ハルヒは、ネットワークを通して、無数の『好奇心』の観察対象となった。 涼宮ハルヒはあの日以来、部室に姿を見せなくなった。いや、部室に行けなくなった。 今や涼宮ハルヒはネットワーク上に多数存在するむき出しの好奇心の観察対象であり、どこに監視の目が潜んでいるかも分からない状態と自身は認識していた。自分に関わりがあると知れれば、他の団員も巻き添えにしてしまうと考えての行動だった。もちろん土日も不思議探索は行っていない。涼宮ハルヒは休日は自宅に引きこもっていた。 実際、涼宮ハルヒはその奇矯な振る舞いの過去ゆえに、何をしてもネットワーク上のむき出しの好奇心たちの関心を引き、それらを喜ばせる『燃料』を提供する存在となっていた。また、それに伴い表面上は気丈に振舞っているが、閉鎖空間の発生頻度、規模ともに増大した。古泉一樹も、ここ数日は『バイト』のため、学校にすら姿を見せていない。 「あたしにできるのは、これだけですから……こんなときやからこそ……こうやって、いつものようにみんなが揃うのを待ちたいんです……」 【あたしにできるのは、これだけですから……こんなときだからこそ……こうやって、いつものようにみんなが揃うのを待ちたいんです……】 朝比奈みくるは寂しげな笑顔で、今日も部室でお茶を淹れている。『彼』と、わたしと、朝比奈みくるの三人だけしかいない、団長不在の部室。 これがここ数日の部室の日常風景となった。 あの日から三週間が経っていた。 放課後の部室。『彼』がわたしに話しかけてきた。 「なあ、長門。その、頼みがあるんやけど……」 【なあ、長門。その、頼みがあるんだが……】 『彼』は恐る恐る口を開いた。 「こんなこと俺が頼むんは、正直どうかと思うけど、でも、どうしても頼みたい。今回の一件、なかったことにとは言わへん。それでは意味もないし。でも、あまりにも影響が大きすぎる。ハルヒも十分思い知ったことやと思うし、その、もうそろそろこの異常な状態を終わらせられへんか? ……情報操作で。」 【こんなこと俺が頼むのは、正直どうかと思うけど、でも、どうしても頼みたい。今回の一件、なかったことにとは言わない。それでは意味もないし。でも、あまりにも影響が大きすぎる。ハルヒも十分思い知ったことだと思うし、その、もうそろそろこの異常な状態を終わらせられないか? ……情報操作で。】 わたしは『彼』を見つめる。 「今回のことは、ハルヒにとって、良い薬になった。自分が他人にしたことと同じことが、何倍にもなって自分に跳ね返って来たんやからな。あいつにとって、人として成長するための良い経験になったと思う。でも、さすがにもうこれ以上は見てられへんわ。閉鎖空間がどうこうとか、そんな話違(ちゃ)うねん。良い経験とは言(ゆ)うても、これ以上続くんはあんまりやろ? これは、人として、友人として、ハルヒを思う俺の気持ちや。長門、お前もハルヒの友人として、あいつを助けてやってくれへんか?」 【今回のことは、ハルヒにとって、良い薬になった。自分が他人にしたことと同じことが、何倍にもなって自分に跳ね返って来たんだからな。あいつにとって、人として成長するための良い経験になったと思う。でも、さすがにもうこれ以上は見てられねえ。閉鎖空間がどうこうとか、そんな話じゃないんだ。良い経験とは言っても、これ以上続くのはあんまりだろ? これは、人として、友人として、ハルヒを思う俺の気持ちだ。長門、お前もハルヒの友人として、あいつを助けてやってくれないか?】 『彼』は手を合わせてわたしに頼み込む。 「……わかった。」 「ほんまか!?」 【本当か!?】 「ただし、わたしの独断で実行するわけにはいかない。情報統合思念体に許可を求める。許可が下りない場合、あなたの希望には応えられない。」 「ああ、それは分かっとぉから。」 【ああ、それは分かってるから。】 わたしは情報統合思念体と交信する。 「……許可が下りた。」 わたしは立ち上がり、言った。 「今殺到している人々が涼宮ハルヒへの興味を失うように情報操作を行う。」 「ああ、頼む。」 わたしは情報操作を開始した。 「……………………」 わたしは『彼』に向き直る。 「お、おい……どないしてん長門? 何でそんなに驚いた顔しとぉ!?」 【お、おい……どうしたんだ長門? 何でそんなに驚いた顔してる!?】 『彼』はわたしの微細な表情の変化がわかるらしい。あるいは、誰にでも分かるほどはっきりと、わたしの顔は驚きの表情を浮かべていたのだろうか。 「……信じられない。情報操作が弾かれた。」 「何(なん)やて!?」 【何だと!?】 「何度も情報介入を行ったが、すべて無効化された。」 「何(なん)でや……」 【何でだ……】 心当たりはある。 「恐らく涼宮ハルヒの意思。彼女は現状をありのまま受け入れることを望んでいると思われる。」 「マジか……」 「今の言い方は正確ではなかった。より厳密に言うと、一部を除いて現状をすべて受け入れたいと望んでいると思われる。」 「……その一部ってのは、何(なん)や?」 【……その一部ってのは、何(なん)だ?】 わたしは部室のパソコンを指差した。 「ネットワーク上に存在する、涼宮ハルヒの身元を特定できる個人情報。」 「! ……そういうことか……」 『彼』は納得した顔で言った。 「現在、ネットワーク上には、人間が『まとめサイト』と称する、今回の一連の出来事をまとめたwebサイトが構築されている。そこには人類の好奇心を満たすための様々な情報が集約され、世界中から参照できる状態になっている。直接身元を特定できる情報は掲載されてもすぐに削除されるが、一度ネットワーク上に情報が掲載されれば、すぐに無限に複製される。よって、一度ネットワーク上に存在した情報を消去するのは、人間には事実上不可能。半永久的にネットワーク上に情報が残ることになる。涼宮ハルヒの意思の影響は、このネットワーク上の情報については薄い。事実を正確に知れば、ネットワーク上の情報は消去したいと思うようになる可能性が高い。その時に情報介入すれば、消去できる。現実世界の状況は、涼宮ハルヒの意思が変わらない限り介入は不可能。」 「…………」 『彼』は沈黙を保っている。 「たぶん、へいき。」 わたしは言った。 「人間の興味の対象はすぐに変わる。あなた達の言葉に、そのような意味の格言があったはず。」 以前に本で見かけた。 「『人の噂も七十五日』。違う?」 わたしはそう言うと、首を傾げた。 ←Report.02|目次|Report.04→
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Report.03 涼宮ハルヒの認識(中編) 翌日。わたし達は涼宮ハルヒに学校で出会うことはなかった。 朝の地域版ニュース、新聞の地方面、すべてがある話題で持ち切りだった。 『お手柄女子高生、犯人逮捕』 そんな見出しが、新聞に躍る。その「お手柄女子高生」は、実名で報道されている。 『涼宮ハルヒ(17)さん=西宮市、写真』 紙面は、昨夜たまたま歩いていた涼宮ハルヒに暴行しようとして襲い掛かった変質者を、彼女が返り討ちにして警察に通報、御用となったと、情報に濃淡はあれど一様に伝えていた。 わたしは昨夜の事件発生時点で把握していたが、普段は接続していない情報統合思念体から強制通信で、『彼』の動向に注意を払い、わたしが最善と考える行動を取る様に指示があった。 こんなことは初めてだった。 もちろん情報統合思念体の接続を切っていること自体、初めての経験なので、当たり前といえば当たり前だが、接続を切ってから、わざわざ情報統合思念体から強制通信で指示があったのは初めて。 最初に涼宮ハルヒが宣言した通り、涼宮ハルヒとSOS団の名前は一気に広い地域に知れ渡ることになった。北高前には大勢の取材陣が詰め掛け、大混乱となっていた。 「押さないでください! 道を開けてください!」 急遽配置された教員が声を張り上げ、生徒達を校内に誘導する。生徒が通るたびに大量のフラッシュが浴びせかけられ、記者とマイクが殺到する。 「同じ学校の生徒さんがお手柄ですね! あなたはどう思いますか!?」 ある者は驚き立ちすくみ、ある者は表情を硬くして俯きながら、教員に誘導され校内へ入って行く。 ――校長がコメントを出さないと、混乱が収まらない―― そう判断した学校側は、校門横で校長本人が対応し、取材陣を引き付けて混乱を収拾することにした。 「えー、この度は我が校の生徒の勇敢な行動により……」 この時ばかりは、生徒達は校長の話が長引くことを祈ったかもしれない。 取材陣の殺到、その様子に集まった野次馬達。それら人波による混乱は、涼宮ハルヒ宅前が最も凄まじかった。 「お手柄ですね、涼宮さん! なにか一言を!」 「当然の結果よ! まったく、アホな変質者やで~! この私を襲おうとしたのが運の尽きや!」 【当然の結果よ! まったく、バカな変質者だわ! この私を襲おうとしたのが運の尽きよ!】 『うおおお……』 野次馬からどよめきと拍手が沸き起こり、取材陣と、ついでに野次馬から大量のフラッシュが浴びせられる。涼宮ハルヒは満面の笑みでそれらを一身に浴びていた。 「さて、学校があるから、話は歩きながらでもええかな?」 【さて、学校があるから、話は歩きながらでも良いかな?】 こうして、さながら大名行列か内閣総理大臣の記者質問のように取材陣と野次馬を引き連れて、涼宮ハルヒは登校した。取材陣から投げかけられる様々な質問に、次々と答えていく。涼宮ハルヒはこの状況に酔っていた。普段の満面の笑みが100Wだとすると、さしずめ1kWの笑顔で教室へ向かった。 涼宮ハルヒはまだ気付いてはいなかった。いや、知る由もなかった。人の好奇心が、時に残酷に人を傷付けることを。 涼宮ハルヒが北高の伝説にまた一つ名前を刻んだこの日、彼女は部室に来ることはなかった。 「えらいことになったなぁ……」 【すごいことになったなぁ……】 『彼』はやれやれ、を通り越して何と表現すれば良いのか分からない顔で言った。 「いやぁ、昨日の時点で、犯人の近くに涼宮さんがおることは把握しとったんですが、『機関』の決定は、『涼宮ハルヒに捕り物をさせて満足させる』やったもんで、手ぇ出せんかったんですわ。まぁ、彼女の望み通り、犯人を捕まえて一躍時の人になりましたからな。こちらとしては『バイト』が当分無くなりそうで、万々歳ですわ。」 【いやぁ、昨日の時点で、犯人の近くに涼宮さんがいることは把握していたんですが、『機関』の決定は、『涼宮ハルヒに捕り物をさせて満足させる』だったもので、手が出せなかったのですよ。まぁ、彼女の望み通り、犯人を捕まえて一躍時の人になりましたからね。こちらとしては『バイト』が当分無くなりそうで、万々歳ですよ。】 古泉一樹が肩をすくめる。 「俺としては、今日には例の件を片付けたいと思(おも)とったけど、とてもそんなことできる状態違(ちゃ)うしな……どうしたもんか。」 【俺としては、今日には例の件を片付けたいと思ってたけど、とてもそんなことできる状態じゃないしな……どうしたもんか。】 「事の成り行きを見守る、でええんちゃいますか? 当分涼宮さんの精神状態は閉鎖空間を生み出す状態にはならへんでしょうし、なに、人の心は移ろいやすいもんやさかい、どうせすぐにいつもの日常に戻りますよって。」 【事の成り行きを見守る、で良いのではないですか? 当分涼宮さんの精神状態は閉鎖空間を生み出す状態にはならないでしょうし、なに、人の心は移ろいやすいものですから、どうせすぐにいつもの日常に戻りますよ。】 「そうなればええんやけどな。」 【そうなれば良いんだがな。】 『彼』は窓の外を見ながら、そう呟いた。 涼宮ハルヒへの取材はますます過熱していった。 最初は、『お手柄女子高生』だった。その日の昼には『お手柄美少女女子高生』に変わっていた。こうなると、人々の興味は『美少女女子高生』の私生活に移っていく。 まず、現在の涼宮ハルヒの生活として、『謎の部活「SOS団」の団長』が紹介された。しかし、このSOS団は学校側非公認であるため、学校側からの情報は得られない。生徒からも、『謎の活動』という情報しか得られないため、すぐに人々の興味から外れた。 次に、涼宮ハルヒのSOS団以外の学生生活に取材が進むと、世間の興味を大いにそそる事となった。すなわち、入学初日の涼宮ハルヒの自己紹介等、彼女の奇矯な振る舞いの数々。 『ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい。以上。』 涼宮ハルヒの呼称は『美少女女子高生はオカルトマニア』となった。 そして、涼宮ハルヒの中学時代のエピソード、特に『告白されても断らず、すぐに破局したこと』が紹介されると、世間の評判の方向性が決定付けられることとなった。 『オカルト女子高生はヤ○マンだった!』 『美少女は百合ゲラーがお好き』 週刊誌、スポーツ誌等がこぞって書き立てる。 当初は嬉々として取材に応じていた涼宮ハルヒも、この頃になると、 「うるさい!」 「写真撮んな!」 などと、取材を嫌がるようになっていた。その態度が取材陣をさらに煽る。 『ヤ○マン女子高生は変質者がお好き』 『哀れ変質者、オカルト女に貞操を散らす』 ネットワーク上では、巨大掲示板群に専用スレッドが立ち、涼宮ハルヒの顔写真を使ってグレイ形宇宙人と性交しているコラージュ等が作成され、「SS」と呼ばれる長短様々な小説風の文章が、無数の書き手によって多数掲載された。特に涼宮ハルヒをいじめるSSと、様々な人や人以外のありとあらゆる存在と性交させるSSは、それぞれ一つのジャンルとして、スレッドが乱立するほど人気となった。 この頃になると、日本各地から涼宮ハルヒの元を直接訪問し、宇宙人等の扮装をして告白してからかう行為や、怪談風、猥談風などいたずら電話を掛ける行為がしばしば見られるようになった。 涼宮ハルヒは次第に彼らの相手をしなくなったが、そうなるとますます彼らはいきり立ち、涼宮ハルヒに反応させようと、行動はますます過激になっていく。 たまりかねて涼宮ハルヒが反応すると、その様子が詳細に電子掲示板に書き込まれ、 『さすがハルにゃん!』 『モノが違うぜ……』 こう返すのが、ネットワーク上での定形文となった。 ついに涼宮ハルヒは、ネットワークを通して、無数の『好奇心』の観察対象となった。 涼宮ハルヒはあの日以来、部室に姿を見せなくなった。いや、部室に行けなくなった。 今や涼宮ハルヒはネットワーク上に多数存在するむき出しの好奇心の観察対象であり、どこに監視の目が潜んでいるかも分からない状態と自身は認識していた。自分に関わりがあると知れれば、他の団員も巻き添えにしてしまうと考えての行動だった。もちろん土日も不思議探索は行っていない。涼宮ハルヒは休日は自宅に引きこもっていた。 実際、涼宮ハルヒはその奇矯な振る舞いの過去ゆえに、何をしてもネットワーク上のむき出しの好奇心たちの関心を引き、それらを喜ばせる『燃料』を提供する存在となっていた。また、それに伴い表面上は気丈に振舞っているが、閉鎖空間の発生頻度、規模ともに増大した。古泉一樹も、ここ数日は『バイト』のため、学校にすら姿を見せていない。 「あたしにできるのは、これだけですから……こんなときやからこそ……こうやって、いつものようにみんなが揃うのを待ちたいんです……」 【あたしにできるのは、これだけですから……こんなときだからこそ……こうやって、いつものようにみんなが揃うのを待ちたいんです……】 朝比奈みくるは寂しげな笑顔で、今日も部室でお茶を淹れている。『彼』と、わたしと、朝比奈みくるの三人だけしかいない、団長不在の部室。 これがここ数日の部室の日常風景となった。 あの日から三週間が経っていた。 放課後の部室。『彼』がわたしに話しかけてきた。 「なあ、長門。その、頼みがあるんやけど……」 【なあ、長門。その、頼みがあるんだが……】 『彼』は恐る恐る口を開いた。 「こんなこと俺が頼むんは、正直どうかと思うけど、でも、どうしても頼みたい。今回の一件、なかったことにとは言わへん。それでは意味もないし。でも、あまりにも影響が大きすぎる。ハルヒも十分思い知ったことやと思うし、その、もうそろそろこの異常な状態を終わらせられへんか? ……情報操作で。」 【こんなこと俺が頼むのは、正直どうかと思うけど、でも、どうしても頼みたい。今回の一件、なかったことにとは言わない。それでは意味もないし。でも、あまりにも影響が大きすぎる。ハルヒも十分思い知ったことだと思うし、その、もうそろそろこの異常な状態を終わらせられないか? ……情報操作で。】 わたしは『彼』を見つめる。 「今回のことは、ハルヒにとって、良い薬になった。自分が他人にしたことと同じことが、何倍にもなって自分に跳ね返って来たんやからな。あいつにとって、人として成長するための良い経験になったと思う。でも、さすがにもうこれ以上は見てられへんわ。閉鎖空間がどうこうとか、そんな話違(ちゃ)うねん。良い経験とは言(ゆ)うても、これ以上続くんはあんまりやろ? これは、人として、友人として、ハルヒを思う俺の気持ちや。長門、お前もハルヒの友人として、あいつを助けてやってくれへんか?」 【今回のことは、ハルヒにとって、良い薬になった。自分が他人にしたことと同じことが、何倍にもなって自分に跳ね返って来たんだからな。あいつにとって、人として成長するための良い経験になったと思う。でも、さすがにもうこれ以上は見てられねえ。閉鎖空間がどうこうとか、そんな話じゃないんだ。良い経験とは言っても、これ以上続くのはあんまりだろ? これは、人として、友人として、ハルヒを思う俺の気持ちだ。長門、お前もハルヒの友人として、あいつを助けてやってくれないか?】 『彼』は手を合わせてわたしに頼み込む。 「……わかった。」 「ほんまか!?」 【本当か!?】 「ただし、わたしの独断で実行するわけにはいかない。情報統合思念体に許可を求める。許可が下りない場合、あなたの希望には応えられない。」 「ああ、それは分かっとぉから。」 【ああ、それは分かってるから。】 わたしは情報統合思念体と交信する。 「……許可が下りた。」 わたしは立ち上がり、言った。 「今殺到している人々が涼宮ハルヒへの興味を失うように情報操作を行う。」 「ああ、頼む。」 わたしは情報操作を開始した。 「……………………」 わたしは『彼』に向き直る。 「お、おい……どないしてん長門? 何でそんなに驚いた顔しとぉ!?」 【お、おい……どうしたんだ長門? 何でそんなに驚いた顔してる!?】 『彼』はわたしの微細な表情の変化がわかるらしい。あるいは、誰にでも分かるほどはっきりと、わたしの顔は驚きの表情を浮かべていたのだろうか。 「……信じられない。情報操作が弾かれた。」 「何(なん)やて!?」 【何だと!?】 「何度も情報介入を行ったが、すべて無効化された。」 「何(なん)でや……」 【何でだ……】 心当たりはある。 「恐らく涼宮ハルヒの意思。彼女は現状をありのまま受け入れることを望んでいると思われる。」 「マジか……」 「今の言い方は正確ではなかった。より厳密に言うと、一部を除いて現状をすべて受け入れたいと望んでいると思われる。」 「……その一部ってのは、何(なん)や?」 【……その一部ってのは、何(なん)だ?】 わたしは部室のパソコンを指差した。 「ネットワーク上に存在する、涼宮ハルヒの身元を特定できる個人情報。」 「! ……そういうことか……」 『彼』は納得した顔で言った。 「現在、ネットワーク上には、人間が『まとめサイト』と称する、今回の一連の出来事をまとめたwebサイトが構築されている。そこには人類の好奇心を満たすための様々な情報が集約され、世界中から参照できる状態になっている。直接身元を特定できる情報は掲載されてもすぐに削除されるが、一度ネットワーク上に情報が掲載されれば、すぐに無限に複製される。よって、一度ネットワーク上に存在した情報を消去するのは、人間には事実上不可能。半永久的にネットワーク上に情報が残ることになる。涼宮ハルヒの意思の影響は、このネットワーク上の情報については薄い。事実を正確に知れば、ネットワーク上の情報は消去したいと思うようになる可能性が高い。その時に情報介入すれば、消去できる。現実世界の状況は、涼宮ハルヒの意思が変わらない限り介入は不可能。」 「…………」 『彼』は沈黙を保っている。 「たぶん、へいき。」 わたしは言った。 「人間の興味の対象はすぐに変わる。あなた達の言葉に、そのような意味の格言があったはず。」 以前に本で見かけた。 「『人の噂も七十五日』。違う?」 わたしはそう言うと、首を傾げた。 ←Report.02|目次|Report.04→